【誕生の背景】工具の新時代を切り拓いた「KUROKINブランド」が生まれるまで

 

はじまりは25年前。ドイツで見た「カッコいい工具」

 

ーー開発の発端は25年も前にさかのぼると聞きました。

野﨑:はい。私はまだ28歳で、社長に就任するかしないかくらいの頃でした。
当時、日本の工具といえばまずは価格そして機能や品質ばかりがクローズアップされて、デザイン性は二の次。
ところが、ドイツのケルンで開かれた世界的な工具の展示会を見に行って驚きました。
工具がどれも非常にスマートでカッコいい。
営業マンもピシッとスーツを着て、シャンパン片手に商談をしていて、すごく洗練されているんですよ。
それを見て、「これだ」と思いました。

ーー工具業界をカッコよくしたい、と?

野﨑:そうです。前職はテレビ局に勤めていたのですが、父の後を継いでフジ矢の社長に就任した時、いろんな人から「どうしてこんな地味な業界に来たのか」と言われましてね。
それが悔しくて、何かワクワクする楽しい業界にしてやろうと思いました。
それにもう一つ、工具業界を盛り上げたいと思った理由があります。
建設業界では今、人手不足が深刻化しています。
カッコいい作業着を着た職人が、カッコいい工具を使って、プライドを持って仕事をする。
そんな、若い人たちに憧れられるような工具を作りたいと思ったのです。
仕事のスタイルがカッコいいなら職人を目指す人が増えるはず。
メーカーの本分である商品づくりから業界を支え、もっと盛り上げたいと考えました。

 

価格ではなく価値で戦うものづくりへ

 

ーーカッコいい業界にするために、どんなことを行ったのですか?

野﨑:外部デザイナーに委託して、まずはパッケージデザインや会社のロゴのリニューアルからスタートしました。
店頭に並んだ商品の中から選んでもらうには、パッケージで品質の良さを訴求することが大事だと考えたのです。
それが2002年のことです。

ーーデザインに力を入れ出したのですね。

野﨑:はい。2010年頃になると、日本のものづくりはコストを抑えた大量生産型からシフトし、心に豊さをもたらす価値が求められるようになってきました。
それはつまり、作ったものを売るプロダクトアウトではなく、ユーザーの声を聴くマーケットインのものづくりが大事だということ。
そこで必要となるのがデザインです。
ユーザーが求めるカッコいいデザインで差別化し、ブランド価値の高い商品を作っていきたいと考えました。

ーー数を売る時代から、付加価値のあるものを売る時代になったと。

野﨑:もっと言えば、経営も一つのデザインなのです。
人口が減少し続ける日本で優秀な人材を集めるには、カッコいい商品はもちろん、カッコいい職場、カッコいい工場を作ってワクワクする企業にしなければなりません。
また、売上を上げるにはペンチ・ニッパーの専門メーカーから総合工具メーカーに会社を成長させなければ。
そのためには価格ではなくブランドで戦える力をつけたかったのです。

ーー今では社内にデザイナーを抱えているとか。

野﨑2015年にデザイン部を作ってデザイナーを迎え入れました。
それがKUROKIN開発者の一人である太田です。

designerOta
デザイナーの太田

その後もデザイン部の強化を続け、今では3人のデザイナーが商品やパッケージ、ホームページ、カタログ、新卒採用の資料までデザインしブランディングを行ってくれています。

 

Japanブランドのカッコいい工具が誕生

 

ーーKUROKINが生まれたのは、1年後の2016年ですね。きっかけは?

野﨑:プライベートで行ったロサンゼルス旅行です。
街中をマットな黒の車がバンバン走っていて、かっこ良かったんですよ。
日本に帰ってきて、デザイン部やマーケティング部、商品開発部のメンバーと何気なくその話をしていたら、「黒い工具を作ってみようか」という話に。
最初は遊び半分の軽い気持ちでした。

ーー当時、黒い工具は珍しかったのでは?

野﨑:そうなんです。実は昔は、職人さんの間では黒い工具は好まれませんでした。
なぜか安物というイメージがあって、赤や黄色といった目立つ色の方が好まれていたのです。
でも、最近では黒は高級感のある色の代表格。特に、黒と金の組み合わせは職人さんにも好まれています。
そこで、黒を基調に、アクセントとして金を加えて作ったら面白いんじゃないか、と。

ーーどんな工具を開発したのですか?

野﨑:最初はクリッパーから作って発売し始めました。
それから、当社の主力であるペンチ・ニッパを発売。
少量を出して市場の反応を見ていたのですが、高級感あるカラーリングが非常に好評でした。

ーーSNSでも話題になっていましたね。

野﨑:職人さんが腰袋にKUROKINを入れた写真をSNSにアップしてくれていました。
好みの工具で揃えて腰まわりをコーディネートし、自分なりのスタイルを表現していたのです。
きっと以前から「カッコいいスタイルで仕事をしたい」という潜在的なニーズはあったはず。
ただ、それを叶える商品が日本にはなかっただけなんです。
カッコいい工具が欲しい人は、外国製を使っていましたから。

ーーそれを、JapanブランドのKUROKINが叶えたのですね。

野﨑:今や会社の代表作と言えるブランドに育ち、たくさんの職人さんたちが使ってくれています。
それ以降、市場にはデザインを意識した工具が増えましたね。
KUROKINが工具の新しい時代を切り拓いたと思っています。