【販売の背景】KUROKINヒットの影の立役者はインスタ。「#KUROKIN」で工具の常識を覆す
おかげさまで、今ではプロショップに限らずホームセンター、ネット通販でも話題性が高いというお声を伺うようになったKUROKIN。
しかし、そんなKUROKINも、発売当初から好調に売れていたわけではありませんでした。
ヒット商品になるまでに、どのようなストーリーがあったのでしょうか。
企画部の辻田とデザイン部の林が当時を振り返ります。
予想を上回った「#KUROKIN」への反応
もともとは「KUROKIN」という名前ではなかったそうですね。
辻田
はい、発売当初は「Black&Gold」というシリーズで販売していました。
ただ社内では当初から見た目そのままの「クロキン」と呼んでいました。
そのほうが呼びやすかったんです(笑)
そこで「Black&Gold」を社内でも浸透していた「KUROKIN」に変更し、ロゴも作成。
単なるシリーズではなく、一つのブランドとして独立させました。
林
デザインも再構築しました。
最初はパッケージに龍の絵を描いていたり、フジ矢のロゴを大きく入れていたりしたのですが、できるだけシンプルにスタイリッシュにブラッシュアップして、KUROKINの世界観を作り上げていきました。
SNSにも力を入れていますね。
林
当社の商品はもともと、商社さんを通して販売店さんに卸すという販売ルートが主。
ユーザーさんに新製品を直接見て頂ける機会が少ないという課題があったんです。
どうにかして見てもらえる機会を増やしたいと考え、ユーザーさんの目に直接触れるようにインスタグラムへの投稿を始めました。
辻田
最初は「黒金」というハッシュタグを使って製品紹介の投稿をしていたんですよね。
でも、「#黒金」の投稿が他に多すぎて、当社の製品とはなかなか結びつかなかったんです。
そこで、投稿数の少ない「#KUROKIN」で投稿をスタート。
すると少しずつ、ユーザーさんもこのタグを使って「かっこいい工具買ったよ」と投稿してくれるようになりました。
林
最初は、そういうユーザーさんの投稿を見つけてはこちらから「ありがとうございます」とコメントをしていました(笑)。
また、当社の投稿に対してもユーザーさんから「どこで買えますか?」などというコメントをもらえるように。
インスタが、当社とユーザーさんのコミュニケーションツールになったんです。
今では、#KUROKINで検索するとフジ矢のKUROKINで投稿が埋め尽くされるようになりました。
予想以上の反響だったのですね。
林
そうなんです。
想定外の出来事もありました。
KUROKINシリーズをずらっと並べた投稿をした時のこと。
揃ったイメージを出すために、まだシリーズ化していなかったドライバーや電工バサミの試作品を端の方に少しだけ映していたんです。
するとユーザーさんから「どこで売っていますか?」という問い合わせが何件もきてしてしまって・・・。
辻田
営業窓口の番号にも電話がかかってきたんですよね。
受付も混乱していましたよ。
「そんな製品が発売されたなんて聞いてない」って(笑)。
林
あの時はご迷惑をおかけしました。
その後、反響の声を受けてドライバーや電工バサミも商品化しました!
他にはどんな反響がありましたか?
林
インスタでユーザーさん同士がつながり始めたことですね。
最初は「かっこいい工具買ったよ」から始まって、「使い心地はどう?」「よく切れる?」というコメントをしあったり、フォローしあったり。
辻田
KUROKINはデザイン性だけでなく、機能面でもワンランク上の品質に仕上げていますから、「品質がいい」「切れやすい」と評判に。
それを見たユーザーさんがまた投稿やレビューをして、と口コミでじわじわ広がっていきました。
林
商品の機能面まで写真に撮って「すごく便利!」とインスタに上げてくれるんです。
例えば、落下防止コード取つけ用のシャックルや、寸切のネジ山を修正する機能をつけたペンチなど。
これはペンチだけでネジ山修正もできるので職人さんに好評でした。
売り場の一角がKUROKIN一色に
販売店での評判はどうだったのですか?
辻田
発売当初からSNSでは好評だったのですが、店舗ではなかなか・・・。
アイテムごとに売り場が違うため、黒を基調としたKUROKINは、他の工具に埋もれてしまってあまり目立たなかったんです。
まだKUROKINを知らないユーザーさんには魅力が伝わっていませんでした。
林
店舗での販売実績が高くはなかったので、販売店さんとしても、他の商品を外してまでKUROKINを並べて売るメリットを感じられなかったんだと思います。
何がきっかけで、風向きが変わったのでしょうか?
辻田
「カッコいい売り場を作りませんか」という提案を行いました。
黒いパネルを背景にKUROKINを並べ、1コーナーにKUROKINの世界観を作り上げるというものです。
林
でも、実は最初は当社の営業社員からは反対されたんです。
黒の背景に黒い工具を並べると製品が目立たなくなる、と。
でも、黒じゃないとKUROKINの世界観は伝わらない、と説得して黒色を基調とした売り場作りにこだわりました。
反響はいかがでしたか?
辻田
まず販売店さんに非常に好評で、お店の目立つ場所に置いてくれたり、SNSで「KUROKIN入荷しました」と売り場の写真を投稿してくれたりするようになりました。
林
黒色で揃えるとカッコよく目立つので、お客さんがよく足を止めてくれるという話を聞いています。
その様子を見て、営業社員も納得してくれたみたいですね(笑)。
これまでの工具は赤や青などのビビッドな色が多くて、黒の工具は世界的に珍しい色。
KUROKINが工具業界の常識を覆したと思っています。
辻田
今は、業界を盛り上げていこうという思いに共感してくれる販売店さんを、「KUROKINパートナーショップ」と呼ばせていただいています。
今後も一緒に、さらにカッコいい売り場作りをしていきたいと考えています。
アラビア語でDMが。海外にまで広がるKUROKIN人気
海外からの反響もあったとか?
辻田
そうなんです。
ブラジルのYouTuberさんから「商品を紹介したい」というDMをインスタ経由でもらいました。
香港や韓国、台湾などには代理店があるのですが、ブラジルでは販売していなかったので驚きました。
林
一度、アラビア語でDMがきたこともあったんですよ。
Google翻訳を使ってなんとかお返事しました(笑)。
海外からの問い合わせが増えてきたので、今は海外の通販サイトでも販売していますし、英語版や台湾版、韓国版のインスタアカウントも作成して運用しています。
辻田
おかげで認知が高まって、今では台湾や韓国でもKUROKINコーナーを作ってくださっている販売店さんもあります。
インスタの活用で人気が世界へ広がっているのですね。
林
はい。インスタはKUROKINとの相性が抜群です。
課題だったユーザさんとの接点も生まれ、「こんな商品が欲しい」というリアルな声も聞けるようになりました。
辻田
今後はユーザーさん、販売店さん、メーカーが一緒になって業界を盛り上げていけるようなブランドに育てていきたいと思います。